しあわせの葉っぱ
なにもかも奪われるような
どん底の体験をして
人はようやっと気づいてゆく
しあわせって
なにかよいことが起きるときだけの
ものではないと
ほめられたり
みとめられたり
手にいれられたり
するときだけのものではないと
そしてね
木の葉をみているとわかるんだよ
いつのときもしあわせなんだんって
春には
母なる大木から芽吹き
笑いかけるような陽ざしのしたに
やわらかなうすみどり色は
ぐんぐんと成長し
夏には
じょうぶになった濃い緑を誇るようにして
さやさやと風に歌い
美しく咲いた花を守るように
寄りそう
実をつける秋の頃には
いつの間にか黒ずみ乾いて欠ける
でもそんなときの葉っぱも
高い空のした輝いている
やがて冷たい雲がおおう冬の気配
ずっといっしょだった木に別れをつげるとき
葉っぱはひとり地に落ちてゆく
それでもしあわせ
そのときだけ葉っぱは鳥になる
あらがうこともなく
風に舞うほんのひとときを楽しむ
地に落ちた葉っぱは
くすぐるように虫が横切ったり
冷たい霜に覆われたり
そんな時間も静かに
しあわせ
ゆっくりとかたちを失い
大いなるいのちの循環へと戻ってゆく
いつのときも
しあわせ
どんな一瞬であっても
ただこの一瞬を
ひと粒の時間を
宝物のようにつないでゆくことを
しあわせというのであろうと
葉っぱを見ていると
教わるんだよ
関連記事
Comment